古き戦い

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しかし、ヘルファリテはそれ以上剣を進めることができなかった。しだいに黒い揺めきは消え、剣は元の姿に戻っていった。 切っ先がカツンと小さな音をたて、床に当たる。 ヘルファリテは力なく天を仰いだ。 「……グランリーオ様、私は間違っていたのでしょうか」 グランリーオと呼ばれた金色の瞳の老人は、瓦礫に腰をおろすと疲れきったように背を丸めた。 しばらく何も語らず、広間に散らばる瓦礫を見つめていたグランリーオは、ゆっくりと口を開く。 「……これで、よいのじゃ」 「しかし、万が一……」 何かを言いかけたが、ヘルファリテは口を閉ざした。 「……すまぬ、ヘルファリテよ。お主に辛い選択をさせてしまって……。本来なら、わしがすべきことなのだ」 グランリーオの金色の目には、うっすらと涙が溜まっている。それを誤魔化すように、固く深く目を閉じ、俯いた。 深く皺の刻まれた肌に、小さく背を丸める老人の姿は、先程まで戦う者の一人として戦場に居た老人の姿とまるで重ならない。とても弱々しく、儚い姿に映る。 「お主も、わしも王族種としての覚悟と誇りはある。じゃが、それらと同様に情愛も持っておる。今回は情が覚悟や誇りよりも強かった……。皆からは弱いと言われるかもしれん。王としての資質を問われるかもしれん。じゃが……それでもわしは、この者を殺すことはできん」
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