古き戦い

7/8
前へ
/968ページ
次へ
「グランリーオ様……」 殺す力はあっても、殺すことはできなかった―― それは深い感情による抑制で、ヘルファリテも同様なのだろう。男に向ける視線が全てを物語っている。 「しかし、幸か不幸かシルエルド族は、わし一人になった。同族が居ない今、この者に施した封は、わし以上の魔力を持つ者でも現れない限り、解かれることはないだろう」 グランリーオは強い断言で言うが、その口調には寂しさが滲んでいた。 「……ヘルファリテよ。これからは、お主が王として民を支えてくれ」 「どういうことですか、グランリーオ様!」 「わしが逃げていると、思うかもしれん。だが、わしはこの戦いで自分の老いを痛感した。わしの力が及ばないばかりに、多くの民の命を失ってしまった……。これから先、何がおこるか分からない。そうなった時に、民を守ることができるか不安になったのじゃ。だから、これからは若いお主が民を先導し守っていってくれ」 グランリーオの意志は固いようだ。 ヘルファリテを見据える真っ直ぐな金色の瞳は、弱さや老いなど微塵も感じることはできなかった。 ヘルファリテは老いた王の意思を尊重し、片膝をつき深く頭を垂れた。
/968ページ

最初のコメントを投稿しよう!

290人が本棚に入れています
本棚に追加