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「未成年でも、仕事には何かしらのリスクは必ずあります。ですから仕事中に本人に何かあっても自己責任という事です。連佛さん、あなたも仕事中に、万が一、何かしらの感染症にかかったとしても、誰かがあなたの代わりに感染症にかかってくれるわけではありませんよね? それと同じです。責任は負いかねますが、私どもといたしましては、保険の範囲内で精一杯善処させていただきます」
「シュウ、それで良いのか?」
太い首を捻り、無精髭の男から隣に座る色白の男の子へと視線を向ける克己。
シュウと呼ばれた少年は小さく頷く。
「もう、来月から高校生になるし、自分の行動には自分で責任をとりたい。だから人に頼らないで出来るだけやってみたいんだ」
「そっか、分かった」
克己は太い首を何度か縦に小さく振ると、腕を組んで天井を見上げた。
十数年も一緒に暮らしていたら分かる。
自分の息子は一度言い出した事は最後まで貫くという事を。
外見は、克己の隣に座る連佛明日香(れんぶつあすか)に似ているが、そういう頑固な性格は克己にそっくりだった。
「辛くなったらいつでも帰ってきなさいよ」
そう言った明日香の声は震えていた。
明日香が必死に声が震えるのを抑えているのがシュウには分かった。
そんな痛々しい母親の姿を見ていられず、シュウは明日香から目を背けた。
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