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「うん、分かったよ」
俯き、ダイニングテーブルの木目を見つめながらシュウは小さく頷いた。
シュウと明日香の会話を聞いていた克己は、固く組んでいた手を解き、自分の目の前に置かれていたボールペンを手に取った。
まるで鉛で出来たボールペンであるかのように、ゆっくりと克己は、署名欄に自分の名前を記入していった。
最後の文字を書き終えると、無精ひげの男がスッと、朱肉を差出す。
数回、ポンポンと印鑑を朱肉に押し当て、克己は書類に強く印鑑を押しつけた。
「では、私はこれで」
透明なグラスに注がれたオレンジジュースを一気に飲み干すと、書類を使い古した革の鞄にしまい、無精ひげの男は席を立った。
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