第一章

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何度か経験した事があるから、直ぐに自分が置かれている状況を把握する事が出来た。 何事も経験しておくという事は、良い事なのかもしれない。 ウチは手探りで枕元にあるはずのケータイを探した。 だけど、何度まさぐってみても手にはケータイの感触が伝わってこない。 仕方なく、掛布団を跳ね飛ばし、ベッドに座るように上体を起こすと、自室を見渡す。 ケータイはベッドの下で、寂しそうにうつ伏せになっていた。 腕を伸ばしケータイを拾い上げ、ホームボタンを二度ばかり押してみるが、全く反応がない。 どうやら電源が切れているみたいだ。 ケータイの電源ボタンを長押しすると液晶画面が薄く光り出す。 電池までは切れていないようだ。 何となくだけど、寝惚けながら何度もけたたましい音を鳴らすケータイにイライラし、電源を切った記憶がある。 僅かに残る記憶によると、どうやらケータイをベッドから追い出したのもウチの様だった。 ケータイの画面に、でかでかと無機質な四つの数字が映し出されウチは、ショックのあまりフローリングの床にへたりこんだ。 入学式まで二週間もあったあの時に、どうしてウチはさっさと課題に取り組まなかったのだろうか。
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