第一章

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オミの入学式に向かう叔母さんが起こしてくれた時に無理やりにでも起きとけばよかった。 そうしたら入学式に寝起きの状態で慌てて向かう事もなかったのに。 叔母さんがウチを起こしてくれた三時間前の出来事を後悔しながら、ウチは入学祝いに買ってもらった自転車をガレージから引っ張り出し、跨ると強くペダルを踏んだ。 後悔先に立たす。 もう四月だというのに北海道の春はのんびり屋さんのようだ。 路肩にはまだ少しだけ、雪が残っている。 正直、春先の北海道の路上は、お世辞にも綺麗とは言えない。 排気ガスや滑り止めの砂で汚れた雪が、溶ける様は、決して美しいとは言えない。 路肩の雪に車輪をとられないように慎重に自転車のハンドルを操作し、雪を避けながら最寄りの地下鉄駅を目指す。 数回右折と左折を繰り返し、ようやく最寄りの地下鉄駅に到着した。 駐輪場に自転車を停め、後輪にU字ロックをつけると、自転車の籠に無理矢理詰め込んだ鞄を引っ掴み、駆け出す。 改札に財布を当て、財布のカード入れの中のIC乗車券を反応させ改札を開き、ホームへダッシュ。 ウチが到着するのを見計らったように電車がスーっとホームに入って来た。 プシューっと電車のドアが開き、電車を待っていた列が車内に吸い込まれる。
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