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「俺はまだ、お前らに気遣われるような老いぼれじゃない!」
メグとウチのパパ、ママにメールを送信し終わったウチの横で怒鳴り声が響いた。
声の方に視線を向けると、白髪頭のガッチリとした体型のおじいちゃんが、顔を真っ赤にし、スーツを着た二十代前半くらいのサラリーマンらしき男性を怒鳴りつけていた。
気が弱そうな男性はペコペコと、自分を怒鳴るおじいちゃんに頭を下げている。
車内にいる人々は好奇の目を男性とおじいちゃんに向ける。
盗み聞きするつもりは、なかったけれど、ウチの真横にいる二人の会話は嫌でも耳に入って来た。
「お前は、じじいに親切にして悦に入っているのかもしれないが、余計なお世話なんだよ。俺はな、毎日ジムに通って十キロのランニングと筋トレをやっているんだ。貧弱な最近の若者なんかより、よっぽど体力があるんだよ」
男性はおじいちゃんの説教中もペコペコと頭を下げている。
こういうおじいちゃんがいるから席を譲りたくても譲れない人が多いのに。
サラリーマンらしき男性が可哀想。
同情はするものの男性に代わって自分が、おじいちゃんに言い返してあげられるだけの勇気は持ち合わせていない。
「オイ、老いぼれじじい、朝っぱらからうるせぇーよ。それとさ、ちょっと良い?」
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