序章

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「入学式まで二週間近くあるから、大丈夫」 「あっそ。なら課題は大丈夫ね。でも今起きないと昼ごはんは、抜きよ。アンタ一人の為に後片付けが遅れるのは御免ですから」 ご飯と聞いて体が勝手に反応する。 ウチは気が付くと羽毛布団を払いのけ、ベッドから飛び出ていた。 これは脳がというより、胃袋がウチの体を動かしたと言った方が正しいかもしれない。 成長期は中学でひと段落したものの、まだちょっとだけ身長の伸びているウチの胃袋は、ブラックホール並みにいつも、何かを吸い込みたくてウズウズしていた。 「あら?あと一時間寝なくて大丈夫なの?」 叔母さんは嫌味という名の銃弾を撃ち込んでくる。 「目、覚めた」 伸びをしながらウチはぶっきらぼうにそう答えた。 そんなウチを叔母さんは冷めた目で一瞥し「ふーん」と言って部屋をスタスタと出て行く。 寒さで震えながら、部屋の窓を閉め、ウチは叔母さんの後を追ってリビングに向かった。 リビングのドアを開けると、油の香ばしい香りがウチを出迎えてくれた。 ダイニングテーブルのいつもの定位置に着くと、叔母さんがすぐにカツ丼を出してくれた。 カツ丼の匂いが、眠っていた胃袋を叩き起こし、一気に空腹感がウチの脳を支配する。 目の前のカツ丼に両手を合わせると、小さく「いただきます」と呟き丼を持つ。
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