序章

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そして、ウチは右手で持った箸をカツ丼に突立てた。 「寝起き早々、よくそんなこってりした物食えるな」 リビングのドアがカチャっと開き、目付きの悪い小さな男の子が顔を出す。 映画やアニメに出てくるバンパイアの様に肌が白い。 ウチは咀嚼した口の中身を冷たいお茶で胃袋に流し込むと口を開く。 「カツ丼ならいつでもウェルカム」 「ふーん」 小さな男の子は、テーブルを挟んでウチの向かいの席にちょこんと座り、冷めた目付きでウチを一瞥すると、自分の目の前に置かれている空のグラスにお茶を注ぐ。 小さく細い指にはまだまだ幼さが残っている。 口調や仕草は、大人っぽいけれど、顔や手はまだまだ幼くて可愛い。 「そう言えばさ、アンタ、アノ話考えてくれた?」 叔母さんは冷めた目付きの男の子にカツ丼を差し出し、男の子の隣に腰を下ろす。 そしてテーブルに肘を着き、掌に小さな顔をのっけるとウチの顔を覗き込んでくる。 「えっとアノ話って何だっけ?」 左手で丼を持ったままウチは首を傾げた。 「また私の話聞いてなかったわね」 小さく溜め息をつき叔母さんは、呆れたと言わんばかりに大げさに顔を左右に振った。
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