序章

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「どうやらそうみたい」 ヘラヘラと笑うウチを見て叔母さんは、また小さな溜め息をつき、口を開く。 「来月から産休に入るから、私の代わりに私の職場で働いて欲しいって話よ」 あぁ、その話か。確か、前にそんな話していた様な。 ウチは叔母さんの大きなお腹を見ながら記憶を呼び起こす。 「叔母さんって正社員だよね?」 一瞬で平らげた丼の中に、ぽつりと取り残された米粒を箸でつまみながらウチは訊ねた。 「うん、そうよ。朝から夕方までフルで働いているわよ」 「学校あるからウチは叔母さんの代わりは務まらないと思うよ」 「コラ、何度言ったら解るの? 私はまだおばさんと呼ばれる年齢じゃないわよ」 会話の流れを平気でぶった切り、叔母さんは河豚が敵を威嚇するように頬を膨らませ、ウチを睨み付ける。 「詩音(しおん)が言ってる『おばさん』は、詩音とお袋との関係上の呼び名で、お袋が年齢的におばさんって言っているわけじゃないと思うけど」 大きなカツを一切れ、口に放り込み目付きの悪い小さな男の子がウチを弁護してくれた。 普段は、ウチを貶してばかりいるのに珍しい事もあるものだ。 「うるさい。音だけなら『叔母さん』も『おばさん』も同じでしょ? それに亜月(あつき)みたいな事言わないで。亜月は一人で十分なの。オミはオミのアイデンティティーを持ちなさい」
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