8人が本棚に入れています
本棚に追加
/251ページ
「どうやらそうみたい」
ヘラヘラと笑うウチを見て叔母さんは、また小さな溜め息をつき、口を開く。
「来月から産休に入るから、私の代わりに私の職場で働いて欲しいって話よ」
あぁ、その話か。確か、前にそんな話していた様な。
ウチは叔母さんの大きなお腹を見ながら記憶を呼び起こす。
「叔母さんって正社員だよね?」
一瞬で平らげた丼の中に、ぽつりと取り残された米粒を箸でつまみながらウチは訊ねた。
「うん、そうよ。朝から夕方までフルで働いているわよ」
「学校あるからウチは叔母さんの代わりは務まらないと思うよ」
「コラ、何度言ったら解るの? 私はまだおばさんと呼ばれる年齢じゃないわよ」
会話の流れを平気でぶった切り、叔母さんは河豚が敵を威嚇するように頬を膨らませ、ウチを睨み付ける。
「詩音(しおん)が言ってる『おばさん』は、詩音とお袋との関係上の呼び名で、お袋が年齢的におばさんって言っているわけじゃないと思うけど」
大きなカツを一切れ、口に放り込み目付きの悪い小さな男の子がウチを弁護してくれた。
普段は、ウチを貶してばかりいるのに珍しい事もあるものだ。
「うるさい。音だけなら『叔母さん』も『おばさん』も同じでしょ? それに亜月(あつき)みたいな事言わないで。亜月は一人で十分なの。オミはオミのアイデンティティーを持ちなさい」
最初のコメントを投稿しよう!