始まりと集い。

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ふ、と彼の隣の空席のその隣、黒髪の何処か大人びた少年が目に入る。漆の様な黒髪に鳶色の瞳。その少年は周りの喧騒をものともせず、ただ静かに本を読んでいる。 周りの空間から切り離された、その浮世離れした姿に赤髪の少年の好奇心が擽られた。 「な、なあ!何読んでいるんだ?」 「…………」 「お、おーい?聞こえてる?よな?」 「…………」 「……おい」 「……喧嘩売ってんの?」 額に青筋を浮かべ本気で噴火する五秒前といった所で少年が顔を上げ、空中に指を滑せた。 『僕に何か御用しょうか?』 達筆に書かれたその文字を見て少年は察した。この少年は言葉を喋れないのだ、と。 「い、いや、何よんでんのかなーって!」 『フタバ=ドルイド著、自然と魔法、あるべき姿。という本です。』 「……それは、面白いのか?」 『読む人に寄っては興味深いのではないでしょうか?ちなみに僕は面白いと感じますねっ!』 語尾が弾んでいる事から大人びている見た目とは裏腹に子供びた内面を持ち合わせているようだな、と彼は思う。
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