第22話 校長先生のお使い

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「そうなの、いよいよデータ野球が実現するのね。ところで気が早いかも知れないけど、甲子園出場ということになったらチアガール部は何人出場できるの?」 「学校に予算として出したのは二十人よ、晶子。それ以上は自費参加になるわ」 「朋美が頑張ったから予算は良いんだけど、学校はどうやってお金を工面するのかな?」 「野球部の経費は高野連から監督とかも含めて二十人分が出るからそれは、それで良いんだけどね。わたしたちとか、ブラバンや応援部の費用は、PTAやOBからの寄付金を募ることになるわ」 「じゃあ、早乙女校長先生の腕の見せ所というわけね」 「でも、大丈夫かなぁ。あの校長先生。なんか頼りないしね」 「その時はわたしたちも、寄付集めに頑張ろう。ほら、商店街とかに立って街の人に呼びかけるのよ」 「そうね、晶子。それも校長先生のやり方次第ね。それより、わたしたちも、チアガール部は三十人の大所帯になったんだから、その中の二十人に入れないかもしれないわよ」 「そうね。イザベラは野球部のマネージャーだから絶対に行けるけど、わたしと朋美は頑張らないとね」  晶子たちはすでに、甲子園出場が決まったような気持ちになっていた。  さて、その東東京大会が始まった。情報武装が整った秋葉高野球部は初戦から好調だった。そして夏休みに入っても破竹の勢いで勝ち進み七月二十八日(日)の決勝戦を迎えた。  場所は神宮球場で、午後一時試合開始だった。対戦相手は奇しくも、春季都大会の時と同じ朝田高だった。春季都大会での雪辱を晴らさんと、山神浩一監督をはじめ朝田高の選手たちは気合十分だった。山神監督は、前回の対秋葉高戦で喫した敗因は左腕エースの秋山投手が球数の多さで疲労困ぱいしたことが大きかったと分析していた。  そこで、この大会では「ノーボール・ノーバント」作戦を展開していた。これは、「もしドラ」で有名になった都立程久保高野球部が実践した作戦の受け売りだったが、決勝戦まで勝ち進んだので、山神は大成功だと思っていた。しかもおかげで、投球数が目覚ましく減ったために、連投にも拘らず秋山投手のコンディションはベストの状態でこの日を迎えていた。
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