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私は、念のため診察室にある姿見用の鏡で自分の頭上付近を確認した。
当たり前だが、数字などどこにもありはしない。
まあ、確かめるまでも無く当然と言えば当然だ。
「ちなみに、今おじさんの頭の上の数字って何が書いてあるか読める?」
「うん。でも大丈夫? それ・・・おじさんの寿命だけど。」
私は、一瞬自分の寿命を聞く恐ろしさに躊躇したが、ここは患者の治療を優先し聞かねばなるまい。
「オーケー。おじさんの頭の上の数字を読んでみてくれるかな。」
少年に微笑みかけた私の顔は幾分強張っているに違いない。
「ええと、1622603576。」
「え・・! ごめん、もう一度ゆっくり言ってもらえるかな。」
彼が再度読み上げた数字を私は急いでメモ紙にボールペンで速記した。
「ひろし君。この数字の意味はわかるかい?」
「うん。おじさんの寿命があと51年5カ月と三時間十二分五十六秒という意味だよ。」
私は、耳を疑った。
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