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「ひろし君。おじさん頭が悪いもんで、さっきの数字からどうやっておじさんの寿命を計算したのか分からないんだけど、教えてくれるかな。」
少年は、そんなことも分からないのかと言いたげな表情で私を見て、事もなげに言った。
「さっきの数字は秒単位だからそれをただ換算しただけだよ、おじさん。」
私は、試しに紙と鉛筆を使って秒数から時間単位を換算した。
こんな計算をしたのは大学入試依頼かもしれない。
十数分を費やしてようやく少年の言った通りの数字に辿り着いた。
計算して分かったのだが、少年は閏年の1日増加分もきちんと考慮していた。
おそるべき暗算能力と言って良い。
私は、この恐ろしく精密な計算脳の持ち主に得心した。
少年の症状についての医師としての私の診断は、幻視を伴う妄想性パーソナリティ障害(PSD)か、並外れた計算能力を持つアスペルガー症候群(高機能広汎性発達障害)だ。
アスペルガー症候群の場合、一般に幻覚や妄想は無いとされているが、感覚異常や感覚過敏を伴う場合、結果として幻覚や妄想と似た症状を訴えることがある。
ただ、PSDが後天性であるのに対し、アスペルガーは先天的という違いがあり、少年の場合は後者の可能性が高い。
それにしても、少年に自分の寿命を告げられた時、内心胸を撫で下ろしている自分に気が付いて苦笑した。
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