寿命の見える少年 3

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「コキ、コキリ・・・」 比較的広い県道から細い山道に入ってすぐ、隣の助手席から骨がきしむような奇妙な音が聞こえてきた。 少年を見て、私はまずいと直感し車を路肩に停車させた。 少年は、助手席で手足を伸ばして硬直したまま歯を食いしばっている。 先ほどの異音は少年の歯ぎしりだった。 「おい、弘君。弘・・・。」 呼びかけても意識は無く白目をむいている. 私はさっと少年の口元に手をやったが、呼吸が停止していた。 完全なてんかん強直発作の症状だ。 私は、すぐに運転席を降りて助手席側に回り込むと、助手席のシートをフルに倒してシートベルトを外した。 間一髪、手足をばたばたと動かす間代発作による痙攣が始まった。 てんかん発作は、始まったが最後見守る以外にない。 幸いだったのは、車の中にはもともと突起物など痙攣時に体を損傷するものが無いことだ。 発作が始まって約一分半が経過した頃、ようやく治まってきた。
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