寿命の見える少年 4

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「弘君は当時何歳だったのでしょうか。」 「推定年齢で三歳ぐらいだろうと・・・。実は、置き去り子のほとんどは身元不明ですので、『だろう』としか言えません。そうした子達は、拾われた日を誕生日とすることが多いのです。」 「なるほど・・・。」 「明日が弘が置き去りにされた日から数えてちょうど七年目。お察しの通り、明日が弘の十歳の誕生日なのです。」 明日の記念すべき十歳の誕生日を前にして行方不明とは、谷村夫妻の苦労が偲ばれた。 「三歳児ともなれば数字を数えられます。そして、既にその当時から『あの能力』を授かっていたようなのです。」 谷村氏は、七年前の出来事を懐かしそうに語り出した。 「弘を引取った後、念のため三歳児検診を受けに妻が地元の病院に連れて行きました。小児科に向かう途中で、あの子が大声で『3.2.1』とカウントダウンを始めると、周囲の誰かが亡くなることが三度も続いたものですから、ちょっとした騒ぎになったようです。病院からやっとの思いで帰ってきた妻にその話を聞かされた私は、単なる偶然に過ぎないと思って、全く取り合おうとしませんでしたが。」 一度や二度でなく三度も立て続けに起きたら 、皆不審に思うのも当然だと思った。 幼児が大きな声で数え始めると、周囲の誰かがバタバタと亡くなるのを目の当たりにすれば、薄気味悪いと思うのが普通の心理かも知れない。
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