川べりにて

9/9
257人が本棚に入れています
本棚に追加
/123ページ
「佑斗が俺を支えてくれたから、俺はここまで来られた。俺に居場所を与えてくれたのが美沙希さんなら、生きる希望を与えてくれたのは、佑斗なんだ」 俺が、亨さんの生きる希望? どういう意味か聞こうと思ったら、それより先にパッと亨さんが俺を見て、しまったというように苦笑いした。 「ごめんごめん、いきなりこんなこと言われたらびっくりするよな。今のナシ。とにかく俺は、二人にとても感謝してるんだってこと。それだけわかってくれればいいから」 それで、俺は続きを聞けなくなった。 「酷い目にはあったけど、おかげで美沙希さんや佑斗と出会えたし、何がどうなるかわからない。まさに『人間万事塞翁が馬』だ」 「人間万事……え、何?」 聞いたことはあるけど、ぱっと意味が思い浮かばない。 中国の故事、だったっけ。 「こら佑斗、ちゃんと教えたろ」 亨さんはポカリと俺の頭を小突く真似をした。 高い空と柔らかな日差しを背に俺を見つめる亨さんの目は、とても優しかった。 ひょっとしたら、この先こうやって何となく、二人でうまくやっていけるんじゃないか。 そんな風に思えた。
/123ページ

最初のコメントを投稿しよう!