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「佑斗が俺を支えてくれたから、俺はここまで来られた。俺に居場所を与えてくれたのが美沙希さんなら、生きる希望を与えてくれたのは、佑斗なんだ」
俺が、亨さんの生きる希望?
どういう意味か聞こうと思ったら、それより先にパッと亨さんが俺を見て、しまったというように苦笑いした。
「ごめんごめん、いきなりこんなこと言われたらびっくりするよな。今のナシ。とにかく俺は、二人にとても感謝してるんだってこと。それだけわかってくれればいいから」
それで、俺は続きを聞けなくなった。
「酷い目にはあったけど、おかげで美沙希さんや佑斗と出会えたし、何がどうなるかわからない。まさに『人間万事塞翁が馬』だ」
「人間万事……え、何?」
聞いたことはあるけど、ぱっと意味が思い浮かばない。
中国の故事、だったっけ。
「こら佑斗、ちゃんと教えたろ」
亨さんはポカリと俺の頭を小突く真似をした。
高い空と柔らかな日差しを背に俺を見つめる亨さんの目は、とても優しかった。
ひょっとしたら、この先こうやって何となく、二人でうまくやっていけるんじゃないか。
そんな風に思えた。
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