第1章

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 平常心なんて糞喰らえだ。口汚くお前を罵ってやりたい。  何度目だよ。なんなんだよマジで。  お前俺と付き合ってんじゃなかったの? 俺の恋人なんじゃなかったの!?  週末しか会えないから平日は残業して頑張って、喜び勇んで会いに来たのに。  なんでお前は他の男と抱き合ってんだよ!  腹が立って腹が立って腹が立って。頭の中沸騰しそうなほど腹が立って。湯気がシューって出た気がする。 「も、いいわお前。好きにしろ」   合鍵を投げ捨て部屋を出た。  アパートの鉄階段を足取り荒く降りていたら、部屋の扉が開いた音がした。 「ま、待って!」  ここで振り返ったらろくなことにはならない。  どうせ甘い笑顔と甘い声で、もうしないって言うんだよな。そんで俺はお前のこと好きだから、許しちゃうんだ。  わかってる。マンネリ化した俺たちの関係に刺激を与えるための儀式みたいなものだって。
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