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第1章 #2
「……あれ、なんだろ。それはそれでちょっとカチンとくるな」
いやいやいや、そこで不機嫌になられても困るんだが。
「てか国枝がここに、ってつまり俺と住むのが嫌ならさ。いつでも出て行ってくれて構わないから」
「俺はぜんぜん。颯吾さんが大丈夫なら、ぜひに。ってなんか、言い方悪かったかな? 一応俺なりに、色々考えて気を使ってみたんだけど」
「気の使い方が筋違い。どうせ気を使うなら、コーヒー入れてくれりゃそれでいいよ」
組んでいた腕を解き、肩をすくめて苦笑いをする。
「まあ、気を使ってくれてありがとな」
どんな考えからそうなったのかは理解できないが、突然転がり込んだ先の家主がゲイだって知ったら、戸惑うよな。ずいぶんと時間差の戸惑いだけど。
「ああ、や。……なんかすいません。えっと、コーヒー飲む?」
照れくさそうな苦笑いを返し、立ち上がる国枝に微笑む。
「飲む飲む。ついでにマーガリンも取ってくれ」
「了解」
冷蔵庫から取り出してくれたマーガリンを受け取り、蓋を開けて視線を上げる。
お湯を沸かしている国枝の後姿を眺め、小さく笑った。
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