第1章 #2

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 あの店のフランスパンにボロネーゼを乗せて食べる。……ヤバいな。想像しただけでよだれが出そうだ。  不審者扱いをされたくはないので、必死に表情を取り繕う。  電車を降りてからは、マンションまでの道を小走りで進んだ。  これだけ楽しみにしていたのだから、俺は悪くない。 「ただいま俺のフランスパンとボロネーゼ!」  部屋に飛び込んだ瞬間、国枝からものすごい冷ややかな目で見られたんだが、どう考えても俺は悪くないはずだ。 「おかえり颯吾さん。フランスパンを買ってきたのは俺で、ボロネーゼを作ったのも俺だけどね」  おお、なるほど。そういう考え方もあるわけだ。俺が悪かった。 「ただいま国枝くんありがとう国枝くん! フランスパンとボロネーゼ用意しといてくれ。先にシャワーしちゃうから」 「今日くらいズボン履いて出てきなよ」  今日くらい全裸で浴室に行ってもいいくらいなんだけどな。  怒らせてもあれなので、鞄をソファーへ投げてそのまま浴室へ行った。  明日はスーツもシャツもクリーニングに出すから、いいだろう。なんて思ったのが間違いだったと気づいたのは、シャワーを済ませ身体を拭いたあとだった。
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