第1章 #2

2/35
98人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
 人は誰しも、多かれ少なかれ自分には理解できない存在を嫌悪する。そんなことはないと言うやつもいるだろうが、大抵はそうだ。  気味が悪いと、気持ちが悪いと、離れていくやつはそれでいい。あからさまな嫌悪の視線も、その時だけなら俺は気にしない。  結局は同じだから。  俺だって、理解できない趣味や性癖を持つやつには、きっと無意識にでも似たような視線を向けていると思うんだ。  ただ、中には攻撃してくるやつもいた。高校時代には不思議といなかったが、大学のときは案外いたな。  声高に、貶める言葉を撒き散らされたりして。あのときはさすがに凹んだりもしたけどさ。 「はいコーヒーお待ちどうさん」  振り返った国枝が、にこりと笑いマグカップをテーブルに置いた。ありがとうと、俺もにこにこと応じる。  こいつは理解できないまでも、きっと受け入れようとしている。色々と考えて、気を使ったって言うならそういうことなんだろう。  コーヒーを一口飲み、フランスパンをひきちぎる。マーガリンを塗ってかじりつき、それからクラムチャウダーに浸した。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!