第1章 #2

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「国枝はあれだな。いいやつだな」 「何突然。何か持って来て欲しいの?」 「今のところ用事はないけど、またこれ作ってね」  はいはいと生返事をし、国枝はお先にと立ち上がった。 「テーブル拭いてから寝なよ? おやすみなさーい」 「おやすみー」  国枝がリビングを出て行ってから、浸したフランスパンを食べる。うまうま。  あれだよな。国枝は、色恋沙汰を抜きにして、友達になりたいタイプだよな。  翌日もその翌日も、帰宅すると国枝は起きていた。明かりのついた部屋にほんわかと幸せな気分になり、出てくるコーヒーに癒される。 「毎晩遅くまで大変だね」  寝室でスーツを脱ぎリビングへ出たら、今夜も起きていた国枝が声をかけてきた。 「四月は少し落ち着きそうだけどな。シャワー行くから、コーヒーよろしくー」  ひらひらと手を振り、浴室へ行こうとした俺は近づいてきた国枝に足を止めた。
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