第1章 #2

4/35
前へ
/35ページ
次へ
「どうかしたか?」 「あのさ、一度言おう言おうと思ってたんだけど、それやめてくんないかな」 「え? コーヒー頼むの?」  憮然とした国枝の表情に、頼みすぎていたかなと首を傾げる。嫌そうに見えなかったからお願いしちゃっていたけど。 「コーヒーじゃないから。俺がやめて欲しいのは、颯吾さんのその格好」  言われて、自分の姿を見下ろす。  靴下にパンツ。それからワイシャツ。……うん、いつもどうりだな。スーツもネクタイも、寝室のクローゼットにしまいシャワーを浴びに行くから普通だよな。 「え? なんか問題あるか?」 「問題あるよ。なんでパンツとシャツでふらふらすんの。ズボンくらい履いていきなよ」  ええ? なんでズボンなんか履くんだよ。だってこれからシャワー浴びるんだぞ? スーツは寝室に吊るすし、洗濯機は浴室の洗面所にあるから洗い物はそっちで脱ぐわけで。 「浴室行くまでの一瞬のために、なんでわざわざズボン履かなきゃいけないんだよ」  シャワー浴びたあとは履いてるし、問題ないだろうが。まあ逆に、シャツとパンツも脱いで歩いていたら、あれかもだけど。 「ズボン履くくらいたいした手間じゃないでしょ? 俺の心にダメージがくるから、その格好で出てくるのはやめてください」
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

98人が本棚に入れています
本棚に追加