第1章 #2

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 自分でやるかとさっさと諦め、のそのそと浴室へ向かった。  シャワーを浴びてリビングに戻ったら、テーブルの上にコーヒーの入ったマグカップが置かれていた。それを見て、思わず笑ってしまう。  どんな顔して入れてくれたんだろうか。律儀なやつ。 「コーヒーサンキュー」  国枝のいる部屋のほうに声をかけ、緩んだ顔のままマグカップを手にソファーに腰掛けた。  置いていた鞄から書類を取り出し、ローテーブルに広げて目を通していく。  明日は一日事務処理だな。国枝も部屋から出てくる気配がないし、今夜は早めに切り上げて寝るとするか。  それにしてもあいつ、何を想像してテンパってんだろうな。  それからも帰宅すると、変わらず国枝はコーヒーを作ってくれた。  スーツを脱いで部屋を出ると、物言いたげに俺を見てくるが無視させてもらった。  何が気に食わないのかわかんないなー、と不思議に思いつつ、シャツとパンツと靴下だから駄目なのかと考えたりもした。  靴下を脱げばいいんだろうか。  シャワーを済ませ、パジャマを着てリビングに戻る。 「コーヒーでい?」 「サンキュー」
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