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第1章 #3
「けっこう。俺はお前と違って、男以外に泣かされたいとは思わない」
「なら篠原を呼びましょうか?」
篠原の顔を思い浮かべ、知らずに顔がひきつる。
「……それだけはやめろよ?」
あいつに泣かされて会社を辞めたやつを、俺は知っている。
綺麗な顔して、うちの課にいた先輩を追い出したやつだ。俺は、マゾじゃない。
「まあいいわ。未来の親戚連れて帰りなさいよ。私はまだ飲んでるから」
「だな。このままいても泣かされるだけだ。国枝、帰ろ」
「なんか、よくわかんねー。あんたたちの関係って、変だよ」
「お子様にはわからないわよ。私は知念が、馬鹿にされてるのにまだ未練残してるのが許せないだけ」
なるほど。隆史は俺を、相当馬鹿にしてるってことだな。
池田が怒るくらい、きっと、ボロクソなんだろうな。
苦笑いで、国枝の腕を引き店を出た。
うわ、ぐらぐらするな。胃の中で日本酒とウィスキーがダンスしてるよ。気持ち悪い。
「なんで颯吾さんが支払いすんだよ」
不貞腐れている国枝を横目に、空車のタクシーを停めて乗り込む。
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