第1章 #3

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「いいんだよ。池田は俺に釘刺してくれたんだから」  たぶん、隆史は俺を見たらちょっかいをかける。そして俺が、ふらふら寄りを戻したら、それをネタに笑うんだろう。  池田は、それが許せないと怒っているんだ。  愛だよな、愛。  馬鹿にされんなって。あんなやつに、馬鹿にされてんなって。池田は、真面目に怒ってくれた。耳に、心に、痛かったがちゃんと届いている。  あの糞女は、情が深いんだ。  小さく笑って、シートに深く身を沈めた。 「ああ……眠い。早く寝てー」  今なら気持ちよく寝れそうだ。そんで明日は花見して、帰りにフランスパン買って、だらだらと家ですごそう。 「なあ、明日ビーフシチュー作って」 「……いいけど。颯吾さん米食べなよ米」  パンのが旨い。  マンションに戻り、靴も脱がずにそのまま玄関にダイブした。 「ちょっ、颯吾さん!?」
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