第1章 #4

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第1章 #4

 マーガリンをテーブルに滑らせ、国枝はソファーに移動した。  あれから、その話題には触れていない。  お互いそれを口にすることはなく、なかったことにしている。無難だよな。それがいい。何もなかったように、同居生活を続けるべきだろう。  かなり強烈な印象だったから、隆史のことよりそっちに気が行ってしまうのだが。それはそれで助かる。下らない甘言の真意は、俺が望むこととは真逆だろうし。  フランスパンに、マーガリンを塗って食べた。いつもの店のが、やっぱ旨いよな。  自宅では国枝とまったりコーヒーを飲んだりしてだらだらとすごし、職場では真面目に仕事をこなし日々を送った。  未来の親戚とはいえ、他人と一緒にいても寛げるので寂しくないし、むしろ居心地がいい。  過度に話しかけてこないせいかもな。  国枝は、服さえ着てれば文句を言わないし、部屋の掃除もしてくれる。  新人の相馬は目の保養になるしで、公私共に充実してすごした四月の半ば。在庫管理の安達さんに昼を誘われ、社員食堂で落ち合った。 「珍しいですね、安達さんから誘ってくるなんて」  にぎわっている食堂の空いている席に、定食の乗った盆を置く。並んで座り、箸を割った。
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