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「お、おやすみって……」
「その前」
いつもより低い声を出し、背後から顔を覗き込んできた国枝に、ゴクリと喉を鳴らす。
うっわ何これ。めっちゃ怖いんだけど。
国枝から漂うプレッシャーに、冷や汗が滲む。
「殴られたって、どういうことか。詳しく聞きたいんだけど」
「あー……その、落ち着け」
「池田さんと飲んでたっての嘘? 糞野郎と会ってたのかよ」
「いや、池田と飲んでた! その、そしたら偶然隆史に会ってだな」
国枝は腕を伸ばして、寝室の扉に手をついてきた。
顔の両サイドに国枝の手があり、俺はぎこちなく振り返ってから、扉に背中を押しつけた。
こ、怖い。目が剣呑としてるし、雰囲気が超怖い!
「へえ、偶然ねえ。そんで? なんで殴られたわけ?」
目の前の国枝の顔が近く、逃げ場もなくて俺は視線を彷徨わせた。
「な、なんかその、喧嘩になって」
「どんな経緯で? ……誤魔化さず、全部言えよ」
全部とか、言いたくねー。背中に嫌な汗が流れ落ちた気がする。
「み、店で、トイレ行ったら隆史がいて。んで言い合いになって、……殴られた」
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