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国枝は目を眇め、物騒な顔つきのまま扉から手を離した。
「前から思ってたんだけど。あいつなんなの? 颯吾さんあいつのどこがよかったわけ?」
どこって言われると困るのだが、やっぱりあれかな。
「顔?」
ひきつった笑みで答えたら、国枝はさも呆れたと言わんばかりにこめかみを押さえた。
「あ、そ。ならあんたのお気に入りのやつの顔、潰してくるから住所教えな」
潰、って……え? 怖っ! 慌てて顔の横で万歳をして、左右に首を振った。
「何、殴られてもまだ未練あるのかよ」
「ないないない! 今日ので未練とかなくなったし、迂闊にも自分の男見る目は曇りきってると思い知らされたけど、」
一息に言ってから、喉を鳴らした。
「あの、国枝めっちゃ怖い、んだけど……」
「そりゃ今全開で怒ってるから。あんたが案外ぼんやりなのはいいんだよ。別にもうそれ込みで好きだから」
嘘、俺ぼんやりなのか? 言われたことないけど、ぼんやりって、なんかひどくないか?
「ただね、あんなやつに泣かされたり殴られたりするあんたには腹が立つの。わかる?」
いやまったく。なんの話してたのかわからなくなるくらい混乱してるから俺。
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