第1章 #5

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 煌々と灯りのついたそこで、国枝はテレビを見ていた。 「ただいまー」 「おかえり」  ソファーからこちらを振り返った国枝に、愛想笑いを浮かべて寝室に入る。  いつまで誤魔化せるだろうか。なんか、叱られそうな気がするんだよな。うう、怖い。  スーツを脱ぎ、スウェットのズボンを履いて寝室を出た。額を押さえて浴室へ行こうとしたら、キッチンに移動していた国枝が声をかけてきた。 「風呂沸いてるから入りなよ。コーヒー作っとくね」 「ん、サンキュー」  リビングを抜け、浴室の脱衣場に滑り込む。  洗面台にある鏡で、額の様子を確認した。  ……痛々しいな。血が滲んでいる額に、そういや小学生のとき、こんな感じでよく膝を擦り剥いていたっけとくだらないことを思い出す。  風呂には浸からない方がいいのかな。けどせっかく沸かしてくれてるんだしな、と悩みながら服を脱ぎ捨てた。  シャワーを使い、頭を洗ってすぐに後悔した。  くぅ、滲みる。痛いんだけど! シャワーで洗い流してそのまま出た。  スウェットを着て、早々にリビングへ戻る。 「早っ、またシャワーだけ?」
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