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マグカップを引き寄せ、辺りを見回す。
クロワッサンはどこだ? 結局あの店で何も食べていないから、腹減った。だいたいさ、カナッペにフランスパンを使わないなんて、ロクでもない店だよな。
「颯吾さん」
戻って来た国枝は、手に消毒液を持っていた。
「気持ちだけ受け取った。クロワッサンどこだ?」
消毒液から目を逸らし、真顔で国枝を見上げる。
「何言ってんの、車借りてフランスパン買ってきたよ。メール見なかった?」
「えっ。見なかったごめん、フランスパンどこ?」
緩んだ顔のまま、クリームチーズの箱を開けようとしたら国枝に阻止された。
「消毒してからだよ」
「だから、気持ちだけ受け取るって」
「馬鹿言わな、……滲みるから嫌だとか、ガキみたいなこと言わないよね?」
にっこり笑う国枝に、俺もにっこり笑う。ガキじゃなくても、滲みるのとか嫌だろが。
しかし無理矢理消毒をされ、テーブルに頬を押しつけじわじわと滲みてくる痛みに耐えた。
「半泣きだし。まったく、これに懲りたら飲みすぎないよう気をつけなよ?」
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