第1章 #5

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「そんな飲んでないって。ビールとワイン一杯づつだし」  フランスパンを差し出す国枝に、顔を上げてそれを受け取る。 「なんでそれで怪我するかな」  向かいに座った国枝が、呆れた視線を寄越すのを無視してフランスパンをひきちぎる。お、いい硬さだな。どこのフランスパンだろか。  クリームチーズをたっぷりと塗り、フランスパンを味わう。うまうま。 「幸せそうだね颯吾さん」 「おかげさまで。ん、そうだそうだ、電話でキレて悪かったな」 「キレどころが颯吾さんらしくて、呆れた」  ははは、すまんすまん。 「けど接待にしては、……ワイン?」 「ああ、池田とだったからな。やっぱワインは今一でさあ」  指についたチーズを舐め、国枝を見たら何故か……え、怒ってる? 「あの人と飲むときは、連絡してって言ったじゃん俺」 「いや、今日は俺の同期が一緒だったからさ。……食べる? クリームチーズ旨いよ?」 「いらない。同期って男?」 「男だけど。旨いのに」
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