6人が本棚に入れています
本棚に追加
思わず声を荒げる。
こいつが密航者として捕まるのは構わないが、そのせいで俺も巻き添えをくうのはゴメンだ。
「……ほら!
誰かに見つかる前に部屋に戻って隠れてろよ!」
と、メノウを地下に押し込めると俺は食堂に戻ってきた。 乗客たちは謎の歌声の正体について尋ねてくる。
「どうだった?兄ちゃん」
「……いや、誰もいなかったぜ」
と、一応言ったものの、誰もいなかったら歌声なんか聞こえるはずがない。
「一体、誰が歌っていたのかしら?」
「もしかして、人魚が歌ってたのかも!」
と、ちびっ子がいう。
……夢を壊すようで悪いが、歌っていたのは密航者だ。
しかし、彼の一言のお陰で
『もしかしたら、人魚が歌っていたのかもしれないな。ハハハ』
という雰囲気になった。
「人魚といえば、兄ちゃん
あんた、人魚伝説について研究している学者センセイなんだって? なんか、人魚の話でも聞かせてくれよ!」
と、先ほどの男が言った。 他の乗客たちも興味あり気にこちらを見ている。
そうだな……
ちびっ子もいるコトだし、ここは[キャプテン・ホーク]の話をちょっとだけ語ってやるか!
「今から500年前、ガリア海を大暴れした伝説の海賊[キャプテン・ホーク]の話は、聞いたコトあるだろ?
その逸話の一つに
ホークの船が嵐に遭って海に投げ出されたとき、人魚の娘に介抱され、傷が癒えるまで海底都市で過ごしていた……っていうのがある
……でな、俺が思うに、海底都市はこの宝石の海の底にあると推測されるんだよ!!
と、いうのも……ホークが残した手記の写しのさらに写しを見せて貰ったことがあるんだが…それによると……つまり日が射す方角や、星座の位置から考えても……こういう解釈によって………そもそも海底都市とはどういうモノかというと……」
《30分経過……》
「……と、まあ…俺の仮説によるとキャプテン・ホークの冒険の顛末は最果ての国ラークダッドで迎えたってコトになる訳だ。 話が長くなっちまうから手短に省略したが、俺の話はこんなトコロだな……って」
『ぐー…すー…ぴー…』
「……おいっ、寝るなよ!!」
ちょっと短めに話を切り上げふと辺りを見渡すと、乗客達はテーブルに突っ伏し、あるいは背もたれにだらんと身体を預けて居眠りしていた
最初のコメントを投稿しよう!