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「いや、兄ちゃん……あんたよく喋るヤツだな~…つか、話長すぎだろ……」
と、最初に俺に話題を振ってきた男は欠伸をかみ殺しながら、なぜかげんなりした様子でそう言った。
まったく……たかだか30分位で
『話が長い』とはこらえ性のない奴らだ。 これだから最近の若者は……
◆◆◆
食事を終えて部屋に戻ると、とりあえず俺はメノウの頭をべしっとはたいた
「あいた。
……もう、なにするの~?」
「何するの、じゃねぇよ……
少しは自分の立場を考えろ!
密航がバレたら、一昔前なら縛り首。 今だって、ブタ箱にぶち込まれて十年は臭いメシ食うはめになるんだぞ」
すると、メノウはしゅんとして
ごめんなさい、と、うなだれる。
「……なんで、歌なんかうたっていたんだよ?」
と、聞いてみると
「……とっても、きれいな満月だったから」
と、また不思議ちゃんなセリフが返ってくる。
「あのね。
私が、人魚さんを探して旅をしている途中、ジプシーの占い師に占ってもらったのよ。
そうしたらね。
『宝石の海に向かいなさい。
そして、満月の夜に、海の水面に映った満月に向かっておうたを歌いなさい。 そうすれば、きっとあなたの友達はあなたの歌に導かれ姿を現すでしょう』って…」
……つまり、そのヘボ占い師の話を真に受けて、のんきにおうたを歌っていた訳だ。
なんで女って、そういう根拠のない占いとか信じるんだろうか?
まあ……女は基本バカな生き物だから、仕方ないんだろう。
それはそれとして……
「そういえば……メノウ。
さっき、お前が歌っていた童謡って…」
不思議な響きのする、異国の歌だった。
どこかで……確かに聴いたことのある、俺の古い記憶の片隅に引っ掛かる、そんな歌……
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