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「ああ、あの歌はね……」
と、言いかけるメノウを手で制し
「――いや、いいっ!
まだ言うな!!
もうちょっと……もうちょっとで思い出せそうなんだよ!
えーっと……
たしか……東方大陸の……」
「私の故郷の
[サザナミ村]の童謡なのよ!」
「そうっ! それそれ……って
何で言っちゃうんだよバカ!」
こういうのは、自分で思い出せないと何故か知らないけどなんか負けた気がするんだよ!
「わたしね、この歌が大好きなの
小さい頃、人魚さんと一緒に歌っていたのよ……懐かしいわ」
彼女はそう言うと、遥か昔を懐かしむように遠い目をして、小さな声で歌を口ずさんだ。
《さざ波がうたを歌う》
《南風が メロディを奏でる》
《太陽が 朝をおくる》
《そして》
《わたしは 明日を旅する》
……きれいだ。
とても、きれいな歌声だ。
俺は素直にそう思った。
しかし……
なにかが、引っかかる。
胸の奥をずきりと刺激する、この懐かしい痛みはなんなのだろう。
俺の古い記憶の片隅に引っ掛かるこのもどかしい思いは、一体なんなのだろうか。
そうだ……
俺は昔、人魚伝説の研究のために
東方大陸の民話や童謡を調べてみたコトがあった。
その中で
とある奇妙な噂を聞いた。
サザナミ村という、小さな漁村にまつわる噂……
昔、その村には17歳の頃から年をとらない女がいたという……
そして、東方大陸には『人魚の肉を食べると不老不死になる』そんな伝説が、古くから伝えられている……
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