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それは、東の大陸に伝わる民話
昔、子供の居ない貧しい老夫婦が蝋燭屋を営んでいました。
ある日、老夫婦が神社にお参りにいくと、そこには可愛らしい女の赤ちゃんが捨てられていました。
その子は、なんと人魚の赤ちゃんだったのです。
人魚の赤ちゃんは、貧しいながらも心優しい老夫婦に大切に育てられ、いつしか美しい娘へと成長しました。
人魚の娘は、売り物の蝋燭に赤い絵の具で綺麗な絵を描きます。
その蝋燭が評判になり、蝋燭屋はたちまち大繁盛しました。
その蝋燭を灯して船を出すと時化の日でも、無事に帰ってこれるのです。
そんなある日、人魚の噂を聞いた商人の男が、蝋燭屋を訪ねてきました。
あの人魚を売ってくれ、という商人の言葉に、夫婦は戸惑いました。
最初は、とんでもない!
と、断りますが
商人が、今まで見たことのないような大金を渡し巧みに言いくるめると、二人は人魚を売ることを承知してしまいます。
蝋燭が沢山売れて
お金が沢山儲かる内に
いつしか、優しかった老夫婦の心は変わっていってしまったのです…
自分が、商人に売られると知った人魚の娘は、最後に手にした蝋燭を真っ赤に塗りました。
そして、商人の船に無理やり乗せられ、凶暴な魔物たちと同じ檻に閉じ込められ
船は西の海に向かって
出航しました……
その日の夜、蝋燭屋に一人の女がやって来ました。 全身がずぶ濡れの、気味の悪い女…
彼女は、蝋燭を一本買うと
にたり、と笑ってろうそく屋を出て行きました。
女が買った蝋燭は、人魚の娘が最後まで持っていたあの真っ赤な蝋燭でした……
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