赤いろうそくと人魚

4/6
6人が本棚に入れています
本棚に追加
/52ページ
~~~~~~~~~~~~~~~ それは、東の大陸に伝わる民話 昔、子供の居ない貧しい老夫婦が蝋燭屋を営んでいました。 ある日、老夫婦が神社にお参りにいくと、そこには可愛らしい女の赤ちゃんが捨てられていました。 その子は、なんと人魚の赤ちゃんだったのです。 人魚の赤ちゃんは、貧しいながらも心優しい老夫婦に大切に育てられ、いつしか美しい娘へと成長しました。 人魚の娘は、売り物の蝋燭に赤い絵の具で綺麗な絵を描きます。 その蝋燭が評判になり、蝋燭屋はたちまち大繁盛しました。 その蝋燭を灯して船を出すと時化の日でも、無事に帰ってこれるのです。 そんなある日、人魚の噂を聞いた商人の男が、蝋燭屋を訪ねてきました。 あの人魚を売ってくれ、という商人の言葉に、夫婦は戸惑いました。 最初は、とんでもない! と、断りますが 商人が、今まで見たことのないような大金を渡し巧みに言いくるめると、二人は人魚を売ることを承知してしまいます。 蝋燭が沢山売れて お金が沢山儲かる内に いつしか、優しかった老夫婦の心は変わっていってしまったのです… 自分が、商人に売られると知った人魚の娘は、最後に手にした蝋燭を真っ赤に塗りました。 そして、商人の船に無理やり乗せられ、凶暴な魔物たちと同じ檻に閉じ込められ 船は西の海に向かって 出航しました…… その日の夜、蝋燭屋に一人の女がやって来ました。 全身がずぶ濡れの、気味の悪い女… 彼女は、蝋燭を一本買うと にたり、と笑ってろうそく屋を出て行きました。 女が買った蝋燭は、人魚の娘が最後まで持っていたあの真っ赤な蝋燭でした……
/52ページ

最初のコメントを投稿しよう!