赤いろうそくと人魚

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その次の日 人魚の娘を乗せた船は嵐に遭って海の底に沈んでしまいました。 それからというもの 人魚の蝋燭を灯した者は 次々と不幸になっていきました。 そして 赤い蝋燭を海の上で灯すと、人魚が現れ船を沈めてしまうのだ そんな、奇妙な言い伝えが 今でも語り継がれているのです… ~~~~~~~~~~~~~~~ 「……悲しい話ね」 それは、本当は幼い頃に聞いたコトのある話だった。 とても悲しくて切なくて、わんわんと泣いた記憶がある。 人魚さんが可哀想 なんて酷い老夫婦なんだろうって だけど…… あの人がわたしを置いていってしまった時、わたしには4人の子どもを養っていく事が出来なくて…… 二人の娘を 遠くの街の、裕福な家に嫁がせた 二人とも、器量良しのとても自慢の娘たちだったから 下の子はまだ、15にもなっていない幼い子だったのに……30も年の離れた男性のもとに嫁がせた こんな、貧しい村で一生を過ごすより、ずっと幸せになれるはずだと、自分に言い聞かせて…… だけど…… わたしも あの老夫婦と同じなのよね…… わたしも…… 「ちょっ…… な、何泣いてるんたよ!?」 急に、目の前がじわりと歪んで ギルが、わたわたと慌てている。 「ほ、ほら…… いい加減泣きやめよ! なんか、俺が泣かしたみたいになってるじゃねーか!!」 「うん……ごめんね…… なんだか、すごく悲しくて……」 ぐすん、と鼻をすすって涙を拭う ギルは、ポリポリと頭をかいて 決まり悪そうに呟いた。 「……ただの作り話だよ 昔の童話作家が作った話だ。 変に感情移入する事ないだろ?」 そう言って、ギルはわたしを慰めてくれた。 ……ギル。 やっぱりあなたはあの人にそっくりだわ。意地が悪くて偏屈で、女心なんて全然分かっていないの。 あの人は手先が器用で物知りで だけど不器用な生き方をする人だったわ。 不器用な優しさをもった人だった…… ねえ、ギル…… きっとあなたも不器用な人なのね 優しさも、その生き方も…… 夜も更けて、そろそろ眠くなってきた。 「ふあぁ…… じゃ、そろそろ寝るか…」 わたしは、最初に隠れていたタルの中に入って 「じゃあ、ギル。 お休みなさ~~い」 「ああ、お休み………って さすがに、そういうわけにもいかないんだよ!! いくらなんでも、女を樽の中で寝かせられるか!」 と、いうわけで わたしとギルは、背中合わせで横になって眠ることにする。
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