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俺は、母から貰った古くてすっかりカピカピになっている西方大陸の地図を取り出した。
西方大陸の南東の港から更に南へ船で3日ほど行った所に、小さな島国がある。
その国の名は[ネプチューン]
古くから人魚伝説が伝えられているという、神秘の国だ。
「は~~~い♪
皆様、ご覧ください!
これが、西方大陸の三大名所で有名な[宝石の海]でございま~す!
真昼はサファイア
夕方にはルビー
そして真夜中は黒曜石……
空の色によって様々な姿を見せるこの海は、まさしく海の神ネプチューンが与えもうた自然界の宝石であると
かの有名な冒険家、ギルバート・アンダーソンの手記にも記されております」
ここは、ネプチューン王国行きの客船の上。 その甲板の上では、ガイドのねーちゃんが観光客たちにうんちくをたれている。
ネプチューン王国とは、主に観光と真珠、そして[泡絹]というネプチューン列島付近にしか成らない海藻を織った布を名産とした小国だ。
なので、この船は主に中の上流階級の観光客ばかりが乗る遊覧船だったりするため、俺のようにチンピラに毛が生えたような旅人にはちょっと居心地が悪い。
俺はガイドの説明を聞き流しながら、蒼い海を眺めていた。
空の色を映し、きらきらと輝く水面……確かに[宝石の海]だなんて呼ばれるだけのことはある。
俺の故郷の海なんて、泥の混じったネズミ色だったもんな。
これだけ美しい海ならば、ほかの海にはない神秘的な生き物が潜んでいたとしても不思議はない。
そう、例えば……
「皆様は、ネプチューンに伝わる人魚の伝説はご存知でしょうか?
はるか昔、この国が生まれた時から伝わる神話を……」
ガイドは語る。
それは、今から千年前
ネプチューンが、かつてアトラス王国と呼ばれていた頃の話だ。
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