赤いろうそくと人魚

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ギルは、左腕の小手と赤いマフラー、なめし革のベストを外してブーツを脱いだ。 そして、青灰色のまとめ髪をほどくと横になった。 「……ついでに、靴下も脱げばいいのに」 「………。 いいんだよ。俺、冷え性だから」 冷え性って…… こんな蒸々して暑い所で長袖Yシャツと厚手のジーンズ履いてて、まだ寒いのかしら? 「……んじゃあ、火、消すな」 と、ギルはふうっと息を吹きかけて赤いろうそくの火を消すと、部屋は一瞬で真っ暗になり、すぐ近くにいるはずのギルの顔さえ見えなくなる。 と、そのとき…… どーーんっ 急に、船に衝撃が走り、船体がぐらりと揺れる 「な……なんだッ!?」 「一体何が……ぎゃっ し、舌噛んじゃった……」 ギルは、すばやくジッポライターを付けた。 「ギ、ギルっ!! まさかとは思うけど…… ギルが赤いろうそく付けたせいで 人魚が船を沈めようとしているんじゃ……」 「んなバカなコトがあるか!! ……もし、そうだったとしても 俺のせいじゃないから! 悪徳商人のせいだからっ!」 と、ギルは何気におとぎ話の登場人物に責任転嫁した。 「この衝撃は、座礁なんかじゃない……おそらく砲弾だ!」 「砲弾? じゃあ、どこかの船がこの船を襲っているってコト?」 一体、誰がそんなひどい事を…? 「……メノウ。 お前はこの樽の中に、隠れていろ 俺は、ちょっと船の様子を見てくる」 ギルは、ブーツを履き身支度を整える。 「ま……待って! 一体、誰が砲撃だなんてひどいことをしたの?」 すると、ギルは呆れたように言った。 「お前な…… ごく普通の客船を襲うような船なんて、一つしかないだろ? [海賊船]だよ」
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