海賊と人魚

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ピストルの発砲音が聞こえる。 『おい、お前ら! 甲板の上に集まれ!』 『な、何だ!? お前らは……がッ!!』 またピストルの音が聞こえ、何かがどさっと倒れる音。 『い…いやあぁぁぁッ!! あなた!! あなたぁぁあッ!!』 『ほら、奥さん。 ダンナみたいな目にあいたくなきゃ、こっちに来な』 『……さてと これで、客室は全部回ったな。 金目のモン漁るのは後にして、俺たちも一度甲板の方へ戻ろうぜ』 ……足音が遠ざかっていく。 どうやら俺の部屋はスルーらしい まあ、客室とは名ばかりの物置部屋だからな。 まさか、乗客が乗っているとは思わなかったんだろう。 「乗客を一カ所に集めて…… その間に、金目の物を物色するのか……?」 俺はしばらく部屋の扉に耳をくっつけ、様子を見ていたが…… ヤツらが居なくなったのを確認すると、俺はがちゃりと扉を開けた。 「ギル……気をつけてね」 と、樽の中身がしゃべる。 「ああ。 お前も、自分の身は自分で守れよ」 ……もしもこれが、英雄物語の主人公だったら 『お前の事は俺が守ってやる!』 とか、言う場面なんだろう。 しかし、残念ながら俺は勇敢なヒーローではなく、冒険家とは名ばかりの[ドロボー]兼[無名学者]に過ぎない。 悪いが、自分の身を守るので精一杯だ。 ◆◆◆ さて、部屋を出る前にまずは持ち物チェック。 戦闘は得意ではないが、一応冒険家の端くれなのでナイフを数本と、仕込み武器は常に携帯している。 あとは、このベスト。 内側に鎖を編み込んであるので 多少は、攻撃から身を守るコトが出来るだろう。 ……本当はピストルも一丁持っていたのだが、乗船するときに預けてしまったのだ。 まあ、射撃の腕は自信がないし、単発式のピストルは弾の補充が面倒くさいからな。 まあ、装備はこんなモン。 相手によるが、三・四人程度なら、なんとか相手に出来そうだ。
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