海賊と人魚

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まずは、状況を把握するコトが肝心だ。 俺は、扉の開いた客室の中を覗く。 部屋の入り口には、乗客の男が転がっていた。 「脳天を一発、ズドンか…… ……ご愁傷様、だな」 転がっている男を跨いで部屋の中に入る。 俺の部屋とは比べ物にならないような豪華な造りだが、テーブルはひっくり返り、リンゴやオレンジなどのフルーツが散乱し、ベッドはスプリングが飛び出し、シーツはでろんと床に落ちている……酷い有り様だ。 奥には窓があり、外が見えるようになっている。 どれどれ…… ちょっと窓を覗いてみた。 ……海賊船が見える。 この客船に比べれば小柄だが、その分小回りが利いて、素早そうな帆船だ。 船の規模から察するに、乗組員は40人前後。 船の守りや非戦闘員もいるだろうから、こっちに乗り込んで来ているのは…30人位か? 海賊というモノは、船長自ら乗り込んで闘うものだ……と、元海賊の知り合いが言っていた。 なので、おそらく船長もこちらの船に乗り込んで来ているのだろう。 メインマストにはドクロの旗…… [ジョリー・ロジャー]ってヤツだな。 またの名を[海賊旗] 月明かりを頼りに海賊旗を見てみる。 ……暗くて断定は出来ないが、赤地の布にドクロの絵。 ドクロの隣には、砂時計の絵が描かれているようだ 赤地の布の海賊旗は 『獲物は皆殺し』 砂時計の絵は 『お前らの命はあと僅か(砂時計の砂が零れ落ちるまで)』 と、いう意味をもつ。 ……つまり。 相手はかなりヤバそうな奴らである事が推測される ……ムリムリ! そんな奴ら、相手にできるワケねーだろ! しかも、少なく見積もっても30人! ……メノウや他の乗客には悪いが 俺はこのままトンズラさせてもらおう。 海に飛び込んで山猫座の方角を泳いで行けば、夜が明ける頃にはもと来た港まで辿り着けるだろう ……ま、普通の人間には出来ない芸当だろうが、俺の場合泳ぎには自信があるからな この窓を開けて、飛び降りれば 誰にも見つからず、海に出られる……と、その時
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