海賊と人魚

4/19
6人が本棚に入れています
本棚に追加
/52ページ
がしゃんッ!! 派手な音を立てて、窓ガラスが粉々に割れた。 「まだ、客が残っていやがったか!」 「おい、てめぇ!手を上げろ!」 ……見つかっちゃったし。 振り向くと、部屋の入り口に男が二人立っていた。 片方はカトラス もう片方はピストルを構えている ええと…… おそらく、彼らの言動やいかにも悪人面な外見から察するに、コイツらも海賊の一味である事が推測される。 「大人しくしろよ? コイツみたいになりたくなきゃ、な」 と、ピストル男は床に転がっている乗客を指した。 この男が持っているピストルは、よく見ると俺と同じタイプの物だ。 俺の事を丸腰だと判断したらしく、男たちはニヤニヤと余裕な笑みを浮かべている。 俺は、男たちを刺激させないようゆっくりと手を上げて…… 右手に仕込んだナイフを取り出してカトラス男に投げつけた! ナイフ投げに関しては、ちょっとばかり自信がある。 「――ッ!!」 ダーツで言えば100点満点。 ナイフはカトラス男の喉元に見事命中した。 男はごぼごぼと血の泡を吹きながら、声にならない断末魔の悲鳴を上げて、倒れた。 よっしゃ。 声帯大当たりぃッ! やっぱ、我ながらいい腕だ。 「――ひぃっ! く…来るな!」 ピストル男は、さっきとは打って変わって怯えたように後ずさる。 後ずさりながらも、ピストルを構えて 「こ……これ以上近づいてみろ! ピストルが、お前の脳天を撃ち抜くぞ!」 ピストル男は、ゆっくりと近づいてゆく俺と距離を取るように廊下へと後退する。 「お……お前! このピストルが見えねぇのかよ!? いいか!? いいか!? これ以上近づいたらなぁッ…!!」 「……あのさぁ。 そのピストル…単発式の奴だろ? さっき、窓ガラス撃った後 ちゃんと弾補充した?」 図星を指され、男はギクリと更に顔を青ざめる。 俺はカトラス男の死体を飛び越え、ピストル男に近づいて…… 手にしたナイフで胸をひと突き。 「――…がッ…は…ッ」 ピストル男は呆気なく絶命する。 突き刺したナイフを抜くと、血が噴水のようにびゃーっと流れ、腕がべたべたに濡れた。 ……切れ味が売りのナイフだったのに、こんなに脂が付いちゃ使えないな…… 「……後で、ちゃんと研いでおかないとな……」 と、その時…… ぞわり 妙な気配を感じ、ざっと飛び退く ザンッ! 俺がさっきまでいた場所に大振りの斧が振り下ろされ、その、やけに重量感のある斧は床にめりこんだ。
/52ページ

最初のコメントを投稿しよう!