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「てめぇッ!!
よくも仲間をやりやがったな!!」
そいつは、南方系らしい真っ黒な肌に、ナイフなんか通らないような分厚い胸板身の丈程の大きさの戦斧を片手で振り回す、屈強な大男だった。
……ヤバい。
この男、この二人組とは明らかに格が違う……
ブーツに仕込んであった細身のナイフを取り出し、今度は俺が、じりじりと後退していく。
なにか……
なにか、使える物はないのかッ!?
……そうだ!
いちか、ばちか……
こいつに賭けてみよう!
にじりよる斧男から距離をとり、俺はベッドの辺りへ追い詰められてしまう。 斧男は更に一歩踏み込んで、はらりと床に落ちた白いシーツを踏みつけた。
「仲間の仇だ!
覚悟しろよ…ッ!!」
斧男は、戦斧を大きく振り上げ…
――今だ!!
俺は、足元のシーツを思いっきり引っ張った!
「――…なッ!?」
ずるんっ
斧男はシーツに足をとられ、まるで大道芸のピエロみたいに盛大にひっくり返る!
ここまで来ればこっちのモンだ!!
俺はひっくり返った斧男にナイフを突き刺し、トドメをさした。
……ふう。
なんとか片付いたみたいだな……
安堵のため息をつくと、戦いの時に感じていた独特な高揚感がさあっと潮のように引いてやけに冷静になる。
すると、頬を伝うどろりとした汗の冷たさや、むせかえるような血の臭い。 こちらを睨み付ける、死体たちの視線や
そして
両手に残る、不快な感触……
それら全てが、急に気になって仕方が無くなる。
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