海賊と人魚

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……もしも これが英雄物語の主人公だったら あるいは、偉大な冒険家ギルバート・アンダーソンだったなら、悪党を殺さずとも撃退できただろう しかし……俺は弱いのだ。 相手を殺さない様に手加減して戦ったら、死ぬのは間違いなく俺の方だ。 だから、戦いの時は敵に容赦しないコトにしている。たとえ相手が女子供だろうとな そして、いずれは俺もコイツらのような死に方をするコトになるのだろう…… それが、明日か数年後か、あるいは今から数時間後か、それは分からないが ……と、珍しくそんな下らない物思いにふけっていると 「お……お兄ちゃん!?」 野太い声が聞こえ、思わず部屋の入り口の方を振り向くと、そこには鎖鎌を持った大男が立っていた。 たった今、俺が殺したばかりの斧男に瓜二つな風貌をしており、どうやら斧男の弟らしい。 てか、その顔で[お兄ちゃん]って……なんて言ってる場合じゃない! 「よくも、お兄ちゃんを!」 鎖鎌男は、ぶんぶんと鎌を振り回しながらこちらへ突進していく や……ヤバい! このままじゃ…… と、その時 ごふっ 鎖鎌男の口から血が飛び出た。 ずしゃり 嫌な音がして、彼の割れた腹筋の間から三つ叉の刃が生えた。 男は後ろを振り向いて、自分の腹を貫いた者の姿を見る。 「……ば…ばかな…」 その姿を見た瞬間、鎖鎌男はそう呟き、どさりと倒れた。 「……大丈夫?ギル」 その人物は、三つ叉の槍を引き抜くと顔に飛び散った赤い雫を拭って、にっこりほほえむ。 「メノウ…… あ、ああ…助かったよ」 俺はそう言うと、構えていたナイフを下ろした。 メノウが持つ、三つ叉の槍の穂先はぽたぽたと血が滴り落ちている 「ギルは隠れてろって、言ってくれたけれど…… やっぱり、一人で乗客の皆を助けるだなんて無茶よ。わたしも一緒に行くわ!」 「あ、ああ……」 いや、乗客を助ける気なんてさらさら無かったんだけど……まあ、ここはそういう事にしておこうか
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