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◆◆◆
俺達は海賊どもの目をかいくぐって船の甲板へと移動し、物陰に身を隠しつつヤツらの動向を窺っていた。
客船の乗員たちは、甲板の船尾に一カ所に集められ、手を縛られている。 そして、彼らの周りをぐるりと囲む屈強の男たち……数は、20人程度だろうか?
その内一人は、ドクロのワッペンがついたつばの広い帽子にフックの左腕をつけた、いかにも
『オレは海賊船の船長だぞ~!』
と、言わんばかりの格好をして、ふんぞり返っていた。
それと、海賊たちに抵抗したのだろう、船乗り達の死体が甲板のあちこちに転がっている。
船には、若い女や子供も乗っていた。 女子供は奴隷市場で売りさばけるから、それらをより分けるために一カ所に集められたのだろうな。
それにしても……
ずいぶん手際がいいな。
砲撃してから皆を集めるまで、大して時間も経っていないのに……
と、思いながら集められた乗員たちを眺めてみる。
……乗客はもとより、踊り子や船乗りなどのスタッフ一同も、一緒に捕まっているようだ。
「……そういえば、アイツの姿が無いみたいだな……?」
「アイツって……?」
「なんか、こう……
こんな客船には不釣り合いな、いかにもチンピラ風の大男が乗っていたんだが……奴らに殺られちまったのかな?」
まあ、人質の様子はさておいて海賊たちの様子を窺うコトにする。
「……乗客は、これで最後か?」
「……何人か、男の乗客が足りないみたいだが…」
「抵抗したヤツらは、何人か撃ち殺しちまったぜ」
何やら、海賊たちの声が聞こえてくるが、俺たちが潜んでいる位置からだと彼らの顔がよく見えない
くそ。
こっち向け、コノヤロー。
「……あの男が居ないな。
お前ら、乗客の中にこう……
こんな客船には不釣り合いな、いかにもチンピラ風のヤサ男を見なかったか?」
どこかで聞いたコトのある男の声
「(ひそひそ)
もしかして、ギルの事かしら?」
……海賊にチンピラ呼ばわりされるいわれはないが、どうやら俺の事らしい。
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