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しかし……なぜ海賊が俺の事を知っているんだ?
「……ああ。
なるほど、そーいうワケか」
少し視点をずらして、海賊の一人の横顔を覗き見る。 そいつは、夕食の時に俺に話し掛けてきたチンピラ風の男だった。
あらかじめ一人を獲物の船に潜入させて、タイミングを見計らって海賊船を手引きする……
なるほど
なかなかいい手だな。
それなら、船の乗員の数も大まかな構造もわかる。 手際がいいのも納得だ。
「あの男が居ないとなると……どこかに潜んでいやがるんじゃねーか?」
「一応、客室の方はビルたち4人に任せているし、ヤツが捕まるのも時間の問題だ」
4人……俺たちが殺った海賊たちのコトか。
「……た、大変だ、ボス!
ビルたちが……」
「――何ぃッ!?
4人とも殺られただと!?
あのバーボン兄弟まで……」
船長は、怒りのあまりわなわなと震え
「絶対に許さねえ! 野郎ども!
4人の仇をとってやるぞ!」
『おぉーーっ!』
「野郎はまだ船内にいるハズだ!
草の根分けてでも探し出せ~ッ!」
船長の号令で、十人ほどが船内へと降りてゆく。
……相手に警戒されたようだが、乗員たちの見張りが半数になるのはこちらとしても好都合!
しかし、未だ乗員たちの周りには、ざっと十人ほどの見張りがいる。
奇襲をかければなんとか……
……いや
乗員たちを人質にとられたら本末転倒だ。
奴らを、乗員のいない所におびき寄せるコトが出来れば……
何か、使えそうな物はないだろうか…? 俺は、辺りをキョロキョロと見渡し、船首の方に妙なモノを見つけた。
「……メノウ。ちょっと耳貸せ」
「え、なーに?
うん……わかったわ」
◆◆◆
俺は、海賊たちの目を盗んで船首の方に移動する。
船首の方には、大砲の砲身と砲弾がセットしてあり、その周りには水夫たちの死体が転がっている。
……どうやら、この大砲で海賊船に応戦しようとしたはいいが、撃つ前に海賊たちに……あるいは、先に潜入していたアイツに殺されちまったのだろう。
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