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……なんか、俺の方が悪役みたいになっているんだけど……まあ、義理堅い連中で助かったよ。
『ボスなんか見捨ててとっとと撃ち殺そーぜ』
とか言われたら、どうしようかと思っていたところだ。
「それなら早く人質を解放しろ!乗員たちと、ついでにその女も」
「……わたしって、ついでなの?」
「仕方ねぇ…ボスを解放したら、約束通り人質を全員解放してやるよ!」
「いや、お前らが先に人質たちを解放しろよ!」
「いや、お前が……」
「いやいや、お前らが……」
……などという不毛なやりとりをしている間にすっかり夜が明け、東の海からは太陽が顔を覗いている。 このままじゃらちがあかないな…
「わかった。じゃあこうしよう」
と、俺は人質交換のやり方を提案する。
「まずは、甲板にいる乗員たちを……そうだな。あそこの食堂の中に閉じ込め、外から鍵をかける。そして、その鍵はメノウに持たせておく。これで、メノウを解放しなければ、俺は乗員たちを助け出すことは出来なくなるワケだ」
「なるほどな。それで……?
ボスと、鍵を持った女を交換すればいいのか?」
「ああ。
だが、今、この場じゃない。
まず、お前らは人質を連れて海賊船に乗り込め。
で、お互いに砲弾の当たらない位置まで船を移動して、それから、小舟に人質を乗せて解放する。
あとは、自分でオール漕いで船の方に戻って来られるだろ?」
と、提案すると
「なんで、人質交換するのに、そんなまどろっこしいコトしなきゃならないんだよ!?」
と、キレられた。
「黙って聞いてりゃいい気になりやがって! お前ら二人が仲間を何人殺したと思っているんだ!」
海賊は声を荒げ、物凄い形相で俺の顔を睨みつける。 そいつは、昨夜俺と同じテーブルでディナーを食べていた大男だった。
「おい、やめろって!」
「15人だぞ!? オレは、コイツらだけはどうしてもぶっ殺してやらなきゃ気が済まないんだよ!」
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