海賊と人魚

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「……おい、小僧」 ふと、小舟の方を見ると、仏頂面した船長がこちらをじろりと睨み付けていた。 「その[アンカー]とかいう武器 フックのヤツから手に入れたんだってな?」 なんだ、てっきり 『覚えていやがれ!』などという月並みな捨て台詞を吐くかと思いきや…… 「オッサン、フックのコト知ってるのか?」 「ああ……アイツとは昔からの腐れ縁だったよ。 20年前、ビクトリア海軍に捕まって吊し首にされたがな」 吊し首に、か…… 「アイツは、色々モノを造るのが得意でな。中でも、そのアンカーはヤツのお気に入りだった。 だが、ヤツが吊し首になる数年前、自称考古学者とかいうチンピラにアンカーを巻き上げられたとかで、愚痴をこぼしていたのを思い出してよ」 巻き上げられた、とは人聞きの悪い。 アレはポーカーの賭けに勝って頂戴したモノだ……ま、イカサマで勝ったんだけどな。 「…お前ぇ、年いくつなんだ?」 船長は、奇妙なモノを見るような目で見上げてくる。 俺は正直に答えた。 「さあな。 二十歳過ぎてから年なんか数えてねーよ」 たわいのない世間話をしている間に、海賊船は大砲の射程外まで遠ざかっていた。 「んじゃあ、そろそろロープ切るから。じゃあな、オッサン」 と、俺はロープを切り離した。 「最後に、一つ言い忘れていた。 俺たちゃな、盗みもすれば人殺しもする海の無法者よ。 だがな、ただ一つ 海賊の掟だけは、何が何でも守らなきゃいけねぇ。 仲間を殺したヤツには、必ず制裁を加えてやる事だ! てめぇがビルたちを殺したコトは一生忘れねぇ! いつか必ず、てめぇを地獄に送ってやる! 覚悟しな!」 そう言いながら、船長を乗せた小舟は、波にのって遠ざかっていった。
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