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メノウは、死に物狂いで俺の体を掴んでくる。
「(ゴボゴボ…)
た、助けて……ギル……」
「わかったわかった!
助けてやるから、首掴むな!」
「(ガボガボ…)
ぐ、ぐるしいぃ~~…」
「……わかった。
百歩譲って首を掴むのはいい。
だから、ズボンの裾掴むのはマジで止めろ!脱げるから!」
「ぶくぶくぶく……」
「だから止めろってあ……ッ!
ちょっ………」
ズボンは海底へと沈んでいった…
今の俺は白いYシャツ、トランクス一枚という、誰にも見せられないような情けない格好だ。
そして、俺とこのバカ女も海の底へと沈みつつある。
とりあえず、あまりにもうっとおしいのでメノウには当て身を喰らわせておいた……こういう時は、気絶させた方が水を吸わなくていいらしいからな。
◆◆◆
……さて、今海から顔をだすと
海賊たちの大砲を食らう羽目になるかもしれないな。 このまま、深く潜って客船の方に向かうか……
メノウを引っ張りながら、俺は宝石の海を泳いでいく。
海賊たちとの攻防ですっかり夜が明け、海はサファイアの色を映し出す。
あまりにも真っ青だから
まるで、空を飛んでいるかのような錯覚さえ覚える。
赤、青、黄色……
ひらひらと泳いでゆく色とりどりの魚たちは、まるで花のようだ。
宝石の海の中で暮らす生き物は
皆このように美しいのだろうか?
………。
つい、我を忘れて見とれてしまったが、今はそんな場合ではない。 早くあがらないと、メノウが酸欠で死にそうだ。
と、思ったその時……
キィイイイィィィイン
甲高い音波が、海に振動した。
この音波は…まさか……
そう思い、海の底を見下ろすと…
海底から、大輪の海の薔薇とも云うべき世にも美しい生き物が
ひらひらと、花びらのような青い尾鰭をなびかせ、こちらへと泳いでくる。
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