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[それ]は
上半身は、まるでアテナイ彫刻の女神像のような美しい少女の姿
そして下半身は、きらきらと青く光る魚のような姿をしていた。
間違いない。
それは……人魚だった。
キィイイイィィィイイン
再び、人魚は音波を放つ。
これは[人魚の言葉]だ。
人魚の首筋にはエラがついておりそのエラを振動させるコトで、音波を作り出す。
音波を長く出したり、短く出したりするコトで意志の疎通をはかるのだ。 人語というよりも、どちらかというとモールス信号に近い。
ちなみに彼女は『お前は誰だ?』
と、言っているようだ。
『俺は、ギルバート。
人魚伝説について研究している学者だ。 君の名前は?』
と、たどたどしい人魚語で自己紹介をしてみる……人魚語なんて、ずいぶん久しぶりだ。ちゃんと意味が通じるだろうか?
しかし、彼女は驚いたように目を見開いて再び『お前は誰だ』と
……いや、違う。
三番目のキーの音にビブラートがかかっていたから……
『お前は何者だ?』だろうか?
とりあえず、言葉は通じたらしくホッとしたものの……
『何者だ?』
なんて聞かれても、なんて答えればいいものか……
俺は、その答えが知りたくて人魚伝説を調べているのだから。
『……ならば、質問を変えよう。
なぜ、お前は
我々の言葉を話すことができる?
なぜ、お前は
息つぎもせずに、これほど長い間海の中に居られる?
そして、なぜお前は……』
そう言って、人魚は俺の足元を食い入るように見つめている。
……若い女に、パンツ一枚の姿をまじまじと見られるのは、ちょっと勘弁して欲しいんだけど。
『……なぜ、お前の両足には
赤い、我々に似た鱗が生えているのだ?』
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